民営化がなにをもたらしたか

 

電通労組    日野 正美

 

<民営化後の合理化の展開>

 

日本における電気通信ネットワークは、戦争で破壊された電話網の早期復旧をはかるために「電電公社」という公的機関によって進められました。建設資金は、「利用者が電話設置時に債権を購入することによって資金を提供する」という電話加入権制度(電電公社債の購入)のなかで創り出されました。民営化以降も一電話契約ごとに「施設設置負担金72000円」という名目で負担が継続されています。つまり、日本の現在に電話網は国民の負担で作られた「国民の共有財産」なのです。1960年代から70年代前半にかけの電話需要の拡大、全国即時網の完成に向けて大量の労働者が採用されました。あとで報告しますが、現在11万人リストラ攻撃の対象になっている労働者がこの時期に採用された労働者なのです。

全国即時網の完成からディジタル通信網に向けたインフラ整備拡充のなか、この設備を使って膨大な利益を上げようとする資本の側の動きは、規制緩和の流れのなかで民間資本の「通信事業参入要請」を受け、電電民営化の流れは急速化していきました。

政府の進める行財政改革のもとで83年「増税なき財政再建、3公社(電電、国鉄、専売)の民営化提言」が打ち出され、84年電電民営化3法が成立し、85年4月民営化され、日本電信電話株式会社(NTT)が発足しました。この民営化以降即座に民間新規事業者の参入がはじまり、95年新規事業者は118社に登っています。

NTTが民営化を通して手がけたことは、労働者の意識改革攻撃でした。コスト意識、民間手法の取り入れ、職場慣行の破壊、既得権の剥奪でした。勤務成績が優秀な者を対象とした「特別昇給制度」の導入、危険予知トレーニング運動、安全唱和、ラジオ体操の強要、小集団活動、名札の着用、全員セールスマン化活動(社長のあいさつ文全戸に配布訪問活動)メンテナンスコストの導入(10分単位で作業を記録)等々、これらの施策は、民営化前年から強制されていきました。私達は、これら全ての会社施策に反対し、拒否して職場で闘ってきました。また、87年には、職能賃金制度(年功序列賃金の基本給を年齢給、職能給、職務給に分ける)を導入し、労働者間の競争意識を高める施策を推し進めてきました。

NTT内で最大労組のNTT労組(当時は全電通労組)は、民営化に対し4原則「分離・分割・民営化反対・新規参入反対」をかかげていましたが民営化法案の成立する直前、「国民のための電気通信事業の実現を」と民営化を容認し、85年の民営化後は経営協議体制に参加し、会社の一翼となって民営化を推進する側に回りました。労資一体の経営協議会体制は、成長部門と不採算部門を切り分け、「組織整備」と称した合理化で廃止、統合、委託化を全面的に展開し、それは労働者の削減合理化として徹底されました。このなかで女性労働者に対する攻撃が徹底されました。番号案内部門の女性労働者に23時帰りの深夜勤務を導入し、104有料化で「呼」を減らし、不採算部門キャンペーンを通して、番号案内部門を集約、廃止し、職転、広域配転攻撃で「希望」退職に追い込むという攻撃で、40000人いた番号案内女性労働者は10000人に減らされました。

85年民営化時の社員数は304000人(男性237000人、女性67000人)でしたが、04年3月時点では203500人です。

成長部門は、88年データ部門、92年移動体通信業務の分離・分社化、不採算部門は、97年設備系部門の子会社化が実施され、労働者は「出向、転籍」が強要されました。そして99年7月、持株会社、東西地域2社、長距離会社の4つに分割されました。大多数の労働者は、東西地域会社に集められました。

2000年に出された3ヶ年合理化計画は、3年間で21000人を削減するもので、全国の営業拠点を300から100に集約し、1県1支店体制にしてそこに地方から広域配転強要するというものです。(これは、通勤困難を見越し実質退職強要)さらに、新規採用の2年間凍結、設備投資の圧縮(電話系設備への投資凍結)、希望退職募集(01年度6500人、02年度10000人、03年度4400人が退職に応じた)等の内容です。

一方で、賃下げ、既得権の剥奪攻撃も徹底されました。00年4月から東西地域会社のベア廃止、各種手当の削減、廃止、50際以上の定期昇給ストップ、成果主義賃金制度の導入がこの2〜3年の間でNTT労組と一体で実施していったのです。

01年4月「NTT構造改革」を発表し、東西地域会社110000人(東西60000人、子会社出向者等50000人)を、全国23カ所の地域アウトソーシング(OS)会社に出向させ、51才以上の労働者に退職・再雇用の攻撃をかけて来ました。NTTを一旦退職し、現在の賃金の15%から30%減でOS会社に再雇用するというものです。02年5月約60000人が対象になり、強制されました。03年は6000人、04年も約6000人が対象になっています。

退職を拒否した労働者は、60歳まで就業規則通り現在の賃金のままで働くことが出来ますが、会社はNTT労組からの要求(退職に応じ、協力した労働者と一緒に働かせることはダメ。首都圏に集めろ)に応え、03年4月、これらの労働者を首都圏の3カ所に不当な広域配転を行い、隔離政策を進めています。私は、その不当配転された一人です。

NTTは、03年9月期決算で過去最高の8426億円の経常利益を上げました。(トヨダ自動車を抜き日本一の利益です。)NTT社長は、「利益に貢献したのは、結局東西会社や長距離会社のコストダウンだ」と今回のリストラが利益を生み出したと明言しています。「とにかく人が多すぎる。東西が売っている市内回線が高いのはそれが原因だ」とNTT前社長もいっていました。NTTとNTT労組の癒着が経営陣のこのような横暴を許しているのです。

 

<裁判闘争について>

 

私たちは、昨年10月東京地方裁判所に「不当配転取り消し」の裁判を起こしました。

私を含め9人で原告団を結成し、闘っています。NTTには、私達電通労組のほかに日本共産党系の通信労組、新社会党系のNTT関連労組等の少数組合がありますが、通信労組も私達より先行して裁判闘争を闘っています。通信労組、NTT関連労組ともNTTリストラには反対で、友好な関係にあり出来うる範囲で共同行動を追及しています。

原告団9人のうち、7人が東北地方から広域配転され、家族と切り離され独身寮で単身生活を送っています。

裁判の目的は、

第一に、NTTの進めている11万人リストラの違法・不当性を暴き、企業の横暴を許さない闘いを社会的につくりあげることです。労働者は、安心して働き、社会生活が営むためのルールを作り上げるために闘い抜いて来ました。労資対等の原則、労働者保護、労働における男女差別の撤廃、家庭と労働の両立を社会的にルール化するために闘ってきましたが、NTTがそれを破壊するのであれば許す事は出来ません。企業の社会的責任を明らかにすることであります。

第2にNTTリストラ攻撃が持つ雇用破壊の意図を明らかにし、全労働者の闘いで打ち砕いていくことです。NTTでは「さらなる構造改革」のなかで、NTTで働いている派遣労働者ら非正規雇用労働者の仕事を退職・再雇用労働者の業務として「派遣業務の社員化」の名のもと、「雇い止め」が始まっています。小泉構造改革の「雇用の流動化」そのものであり、小泉構造改革に反対し労働と社会を問うものとして闘います。

第3に、NTT構造改革・11万人リストラがもたらす社会的問題を通してNTTを包囲する闘いを展開することです。営業窓口の廃止など突き詰めていけば「公共サービス」の切り捨てに繋がっています。国鉄のローカル線廃止を同様に、「電話局」等の拠点が地域住民の生活の核の一つであることがほとんどです。人通りが途絶え、それが町の中心街のシャッター通り化に拍車をかけています。

「月額4000円に満たない収入」の公衆電話の撤去が進み、84年930000台が現在580000台と半減し今年中に90000台が撤去されます。介護・福祉の現場では公衆電話の維持の要望が上がっています。公共性の切り捨てで公衆電話(不採算部門)、ライフラインの維持(固定電話系の設備投資凍結)が困難になっています。利潤が稼げない地方都市は大都市とのディジタルディバイドを拡大させています。「あまねく公平に」というNTT法の理念が画餅にすでになっています。利用者と一緒になり公共サービス=共有財産のあるべき姿を考えることです。

第4に労働者のための労働組合・労働運動を築き上げる闘いとして展開することです。労資一体での合理化推進し、一切の犠牲を労働者に転嫁するNTT労組官僚に代わり、職場の労働者に闘うことの楽しさ・勇気を与える裁判闘争を展開しようと考えていますし、NTT内の闘う全ての労働組合とともに共同闘争をめざし、労働者の闘う流れを創り出すものとして闘っていきたいと考えています。

 

最後に、通信事業の民営化は、国民の共有財産を私物化し、利益の最大化をはかるもので、競争原理の導入は「公共サービス」の切り捨て、コスト削減の名のもと労働者への犠牲転嫁として貫徹されるものであることが明確です。「公共サービスに競争はいらない」事を前提に公共サービスを維持するためには「民営化ではなく、NTTの再国有化を」から問題を立てる必要があるとおもいます。

アジアをはじめ世界の労働者、労働運動との具体的な連帯行動を通して公共サービスを切り捨てる企業を包囲していきましょう。