日常を管理・監視・制限する 「緊急事態宣言」発動に警戒せよ!

新型コロナウイルス感染症が全世界に拡散し、日本国内では、4月7日現在で、感染者数は4000人超え、死者80名(厚労省発表)、世界では、感染者数が120万人を超え、死者も67510人(WHO発表)とWHOが「パンデミック宣言」を出した3月11日から1か月で10倍の勢いである。

安倍政権は、4月7日、改正「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以後、改正特措法とする)に基づき、新型コロナウイルス感染症を抑止するとして、「緊急事態宣言」を発令した。
改正特措法案が国会に提案された時、憲法学者や弁護士は、内閣総理大臣の緊急事態宣言のもとで「行政権への権力の集中」「市民の自由と人権の幅広い制限」など、日本国憲法を支える立憲主義の根幹が脅かされかねない危惧があると反対の声明を発していた。
声明では、「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるもの」との条文は、抽象的であいまいな要件が示されているだけであり、「政令で定める」ことになっていて、その解釈拡大と権限が政府、内閣総理大臣のフリーハンドになっていること。
国会への報告だけで、事前、事後の国会への承認は不要しており、民主主義、立憲主義が反故にされていること。

宣言が発せられると規制権限が都道府県知事に委ねられるが、外出の自粛要請、多数の者が利用する施設の利用制限、施設を利用した催物開催の制限、要請、指示ができることについて、憲法で保障された集会の自由や表現の自由を侵害しかねないこと。
NHKが「指定公共機関」とされ、内閣総理大臣の必要な指示を受けることになっている(33条1項)ことについて、報道機関が権力からの独立と報道の自由を確保できないこと。
上記のような問題点について、批判して撤回を求めている





<唐突な対策と緊急事態宣言>

プリンセス・ダイヤモンド号の対応をはじめ、検査体制の確立など初期対応の遅れを取り戻そうとする安倍政権は、専門家の意見も聞かず、準備も根拠も説明もないなかで、「イベント開催自粛要請」「小中高の学校休校」「中国、韓国からの入国規制」などが唐突に行われ、東京オリンピックを最優先にして「完全な形で開催したい」という稚拙な野望が更なる遅れと混乱に拍車をかけたのである。
先が見えず、解決策がないなかで、初期対応で躓いた安倍政権は「緊急事態宣言」で乗り切りを図ろうとしているが、感染抑止や拡大防止にどうつながるのか説明がされていない。
この機を利用して自民党内や一部の野党からは、憲法に「緊急事態条項」を新設しようとする改憲の動きがあることも看過できない。「緊急事態宣言」下では、政府の強権化により、NHKへの報道規制のように情報が見えなくなり、隠蔽と情報操作も可能になる。また、麻生の「武漢ウイルス」発言に見られるように、レイシストによるヘイト発言、ヘイトスピーチも拡散されており、断じて許されるものではない。

「為政者は、一度手にした権力を手放さないものだ。いったん、個人の自由を制限する権利を有すれば、それはどんどん広がる可能性はあっても、元に戻すことは至難の業だ。私たちの日常を管理、監視、制限することを、公権力に与えるその第一歩が緊急事態宣言だ。」(山田 健太 専修大学教授)

政府に権限を集中させ、市民の自由や人権を制限し、民主主義、立憲主義を脅かす「緊急事態宣言」発動に強く警戒せよ!

 
 

<国による休業補償を求める!
 全ての労働者に区別のない社会保障を!>

接触を減らすことで感染爆発の抑制が目的として「緊急事態宣言」が発せられ、イベントの自粛や休業の要請が強められようとしている。1000uを超える床面積の百貨店や映画館、ナイトクラブなどの施設が使用制限対象として列挙しているが、休業補償や損失補填を求める事業者側の声に国は、「社会的制約だ」として応えていない。

「緊急事態宣言」が出される前から、コロナ感染拡大により一時帰休、解雇、雇止め、内定取り消しなどの労働問題が全国で多発している。宣言後、外出の自粛や休業要請が強化されれば、収入の激減を理由に、労働者への賃金切り下げや未払い、解雇等が増大していくのは明らかである。とりわけ、契約社員や派遣、パートの非正規労働者や外国人労働者などにしわ寄せがいくだろう。
 リーマン・ショックの時も、製造業を中心に非正規労働者が大量解雇され、住む場所も奪われるという事態が生じたが、当時より非正規労働者が増加しているなかで、解決策や出口が見えない「コロナ・ショック」での事態では、経済的な低迷は長期化し労働者の働く環境は、更に深刻化するのは間違いないと思われる。
事業者への国の休業補償・損失補償を求めるとともに、一斉休校で子を持つ労働者を休業させた企業への助成(1日8330円)やフリーランス(1日4100円)などは実施されるが、全ての労働者に区別のない社会保障を求めるものである。


 
<一人で悩まず、弁護士や労働組合へ相談を!>

日本労働弁護団は、「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A」を作成して、悩んでいる労働者に相談を呼びかけている。
<添付ファイルを参照にしてください。>


 休業になっても賃金が支払われること(休業手当)、在宅勤務(テレワーク)での賃金は下がらないこと、会社に感染予防措置を求めること(安全労働義務)、感染した時の傷病保障と労災申請が可能なこと、自宅待機時の賃金支払い要求ができること、一方的な解雇・雇止めへの対処方法、「内定取り消しは解雇と同じ」で一方的にはできないこと等が、わかりやすく紹介されている。
全労協、全労連、連合など労働団体も労働相談センターを開設して、コロナ感染で悩んでいる労働者に窓口を開いている。一人で悩まず、弁護士や労働組合に相談して命と暮らしを守っていこう!