6月29日、「働き方改革関連法案」が野党や全労働団体、法曹関係者、全国過労死を考える家族の会、多数の市民の反対を無視し参院でも可決、成立した。 労働基準法の解体に道を開く暴挙であり安倍自公政権と賛同した勢力に対し怒りをこめて抗議する。 「働き方改革一括法案」の中でも最悪の、定額働かせ放題、過労死促進法と言われる「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)には、法案の前提となるデータの間違いが次々に発覚し、立法の前提が崩れているにも関わらず、会期を7月まで延長して多くの反対にもかかわらず数の論理で採決成立させた。 成立を受け、安倍首相は29日、「70年ぶりの大改革だ。長時間労働を是正し、非正規という言葉を一掃していく」と改めて記者団に自画自賛した。 これに対し過労死遺族は、遺族らの尽力で、2014年に過労死防止法(過労死等防止対策推進法)が成立した経緯を踏まえ、過労死を助長しかねない高プロの成立に、「過労死のない社会づくりとは真逆の法律が成立するとは」と怒りを込め「労働者と雇用主は対等ではありません」とし制度の撤廃や悪用されない仕組みを求めていくと更なる闘いを宣言している。 |
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政府の働き方改革実現会議「働き方改革実行計画」を法案化したのが「働き方改革関連法案」であり、過労死ラインを越える長時間残業の合法化や賃金差別の拡大等、経営者の意向を全て反映した許せない内容である。 労働基準法を始め、労働安全衛生法、労働者派遣法、労働契約法、雇用対策法などの8法案を一括で「働き方改革関連法案」として、安保関連法と同様に、労働者側が求めてきた同一労働同一賃金、長時間労働の規制と均等待遇要求と真逆なものを一括化した姑息な手法であった。 安倍政権は、発足以来、労働時間法制や雇用法制の規制緩和を推し進め、非正規労働者を拡大する政策を進め、長時間過重労働を放置し、正規・非正規労働者の格差を拡大してきた。 過去に二度も廃案になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」裁量労働制の拡大は、名称を変えて出してきたもので、従来の「賃金と時間」を基準とする考え方から「成果を基準」とするもので、労働者を保護するための時間規制を無くする「労働時間規制の解体」なのだ。 「高プロ」は、48日間連続して1日24時間働かせる事が可能になり、連続1,152時間の労働を強制することも合法になりうる。 年間960時間もの時間外労働プラス休日労働を容認する36協定の特別条項も認められる。「365日24時間、死ぬまで働け」とする様なブラック企業が合法化され、労働者は「違法だ」と言えなくなり労働基準監督署も介入でき無くなる。。 |
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国会審議は、序盤から裁量労働制拡大の根拠となる「データ」ねつ造が発覚し、裁量労働制拡大は法案から削除せざるを得なったが、スーパー裁量制と言われる(高プロ)は、過重な業務命令に労働者の命をさらす過労死促進法と指摘されたが、ほぼ原案通り成立させられた。 又、「労働生産性の向上」を新設、経済政策を重点に雇用対策の柱にするという内容でも、労働者保護という観点は全くなく、過重労働、人員削減により不安定雇用が増大するのは明らかだ。 これまで確立されてきた「働き方の標準」は、経営者の勝手な判断で解雇できない安定雇用。労働者の生きる権利を守るという観点からの生活賃金の保証。労働時間の規制。それらはILOの労働者保護の国際標準を踏まえたものある。 今回の労働基準法改悪では、時間外労働に「1月100時間未満・年間720 時聞」の時間外労働の上限規制を設けるというものの過労死労災認定基準の一部分のみを取り出しただけで決して長時間労働の歯止めとはならず過労死認定が厳しくなる恐れさえある。 しかも、自動車運転業務、建設事業、医師、新技術、新商品等の研究開発の業務については、規制の5年間猶予・適用除外等の別取扱いを認めており、勤務間にインターバル時間(勤務間休息時間)設置も罰則なしの努力義務にとどまる。 |
法案では有期契約労働者を現行のパート法の対象にし、パート法8条・99条の適用で均衡・均等処遇を実現するとしている。 昨年末に示された「同一労働同一賃金ガイドライン」でも「待遇差がある場合は、いかなる待遇差が不合理なのか」の例示だけで、判断基準すら明らかではなく使用者の説明責任や正社員との比較対象者も明確で無い。 法案では、非正規格差是正は基より、男女間の格差是正や正社員間の格差是正(大企業と中小企業、親会社と下請会社など)では全く記載もない。 「高プロ」対象は年収1075万円以上の高度な専門的知識を必要とする業務としているが、対象は国会審議を経ない厚労省令(政令)で定めるとなっており労働者派遣法や裁量労働制と同様に何時でも緩和できる。 経団連は「ホワイトカラーエクゼンプションの提言」時に、「この制度が実効性のある為には年収400万円以上の一般職の人にも適用可能にすべき」としており、2015年、経団連の榊原会長は「高プロ制度は年収要件の緩和や職種を広げる形にしないといけない」と発言。今年5月30日放送のNHKクローズアップ現代+で、竹中平蔵パソナ会長が経団連と安倍政権の代弁者として「「高プロ」を入れないと日本経済の明日はない。適用する人が1%ではなくて、もっと増えていかないと日本経済は強くなっていかない」と明言。派遣法と同様「高プロ」も「小さく産んで大きく育てる」と最初から対象拡大が前提なのである。 法案の内容も「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の対象業務や年収要件。時間外労働の上限規制の詳細、勤務間インターバル。同一労働同一賃金に関するガイドラインなど条文では明確になっておらず、政省令・指針等において定めなければならない事項は60項目を超え多数に上る。 更に、47項目の附帯決議がなされるなど「法律性」そのものが問われており、法の適用年代である30.歳台以下の働き盛りでさえ世論調査では、49%が「法は疑問」と回答している。 |
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私たちは、労働者の生活を更に破壊して、貧困層を増大させ格差を拡大するばかりか、 過労死などの増加が容易に想像できる法改悪に反対し官邸政治主導の労働行政の転換を求めてきた。 「長時間労働規制」「同一労働同一賃金」とどれも労働者にとって死活的問題が多い一括法案の中で特に悪質な「過労死促進法・定額(賃金)働かせ放題法案」と批判される(高プロ)の導入に対しては、連合も含め全ての労働組合と労働者が反対しており、労働政策審議会での建議の際にも労働側委員は全員「高プロ」法案に反対。更に「過労死を考える家族の会」等の遺族や日本弁護士連合会などの法曹界、最賃引き上げを取り組む若者市民運動グループ(エキタス)等々、多くの人々も反対してきた。 私たちは、闘いを止めるわけにはいかない。 2019年4月の施工に向け、政省令・指針を検討する「公・労・使」による構成の「労働政策審議会」での闘いが重要であり職場での闘いも一層強めていく。 「働き方改革」に反対する多くの労働団体や、過労死を考える家族の会など市民運動や法案に反対した野党とも連携し、「働き方改革関連法」の廃止・8時間働けば暮らせる社会の実現を目指し「安倍政権打倒」全国から声をあげ大きな力に変えていく決意である。 2018年7月1日 電気通信産業労働組合 |